前の記事でもちらっと触れましたが、このゴールデンウィークに連光寺坂上にオープンしたという HILLTOP というサイクルカフェに休憩がてらおじゃましてきました。
ここがむかし「ヒルトップながさわ」というクリーニング屋兼酒屋兼タバコ屋兼雑貨屋兼……要するによろず屋だったことを覚えている地元の人もいるかもしれません。長らく(数年間)空き店舗だったのですが、軒先にバイクラックが置かれて、簡素なカフェができていました。
カフェと言っても空き店舗にそのまま(廃物利用とおぼしき)机や椅子を並べただけの質素な店構えで、ドリンク類はサーバーでセルフサービス100円。「HILLTOP」の看板はぜんぶ昔の店舗の使い回しなのでとことん初期投資を抑えていることがわかります。
私が訪れた日は外国人講師が大画面テレビを使って数名の外国人生徒を相手にヒルクライム教室を開催していました。英語がわからないのでそちらは聞かずジュースをいただきながらご主人と世間話。プロチームで30年メカニックをやっていた御仁とのこと。直感で、「この人は世間話させてもらえばもらうほど勉強になるタイプの人だ」と思いました。知識の泉ってやつ。
さて、本題。
この店には、珍しい自転車用のホイールバランサーがあって、自動車でタイヤを交換するときにやるようなバランス取りを自転車のホイールに施工してくれるそうです。
ホイールは横フレ縦フレを取り除いたとしても、その重心は必ずしもド真ん中に来るとは限りません(というか、ド真ん中には来ないのがふつう)。リムやタイヤの肉厚の微妙なムラが重心の偏りとなってダウンヒルなどの高速回転時にガタガタとした縦方向の振動を発生し、安定性を損ねてしまうのです。
クルマの場合は車輪の質量も回転数もケタ違いに大きいのでこの振動が看過できず、どんなクルマでもタイヤを組むときにこのバランシング作業は必須です。でも自転車ではあまり聞きませんよね。
ヒルトップでやってもらえるホイールバランシングも理屈は自動車のそれと同じ。専用の機械でホイールを高速回転させて偏心を計測し、偏心している部分の反対側にカウンターウエイト(小さな鉛のシールなど)を貼り付けて偏りを打ち消して重心を芯に寄せるという作業です。
バランシング作業はしてもらいませんでしたが、私のFホイール(キシリウムエリート)をためしにバランサーにかけてもらったところ、高速で回すと(時速70km相当)アームがガクガク振動して、たしかに偏心していることがわかりました。
ちなみに同行した仲間のホイールもバランサーにかけようとしたのですが、そちらは26H(片側13H)という変態スポーク数のMAVICヘリウム前輪だったため適合するアタッチメントがなく断念。
バランシングしたお客さんがお店を出てすぐの連光寺坂の下から「これすごい!」と電話をかけてくるほど効果は絶大らしいので、興味のある人は連光寺のついでにお願いしてみてはいかがでしょう。工賃は片輪3,000円/前後輪5,000円だそうです。
この機械のような精度は到底望めませんが、自分でやる方法もあります。ホイールをふわーっと自由回転させてみて、毎回決まったところで止まるならバランス調整の余地があるということです。一番下にくる場所が一番重いということなので、その180°反対側に錘(おもり)になるものを貼り付けてバランスを取ります。止まる場所がアットランダムになるまで錘の位置と重さを調整します。お茶の間でできるバランス取り。
ただし、この方法では回転抵抗(ハブの摩擦など)に勝てないような小さな偏心は検知できませんし、ハブの回転ムラを偏心と誤検出してしまうおそれもありますね。ごく小さな偏心を是正するにはこのお店のマシンのような機械で高速に回転させて、偏心の影響を誇張してやる必要があるわけです。角運動量保存の法則ですね。
個人的に少し気になったのは、タイヤやチューブがどのくらい重心の偏心に影響するのかというところ。ホイールの質量構成比で考えればリムの重さが圧倒的なわけですが、もしタイヤやチューブも少なからず影響してくるとなると、それらを交換するたびにバランスの取り直しに……。
で、本題。バランスしているホイールって超気持ち良い〜です♪ 特にダウンヒル時の高速コーナー。
ご存じかも知れませんが、完組ホイール(の高級品)は、チューブバルブ&バルブ周辺の盛りゴムの重量とバランスするように、バルブ穴の反対側が少し重く作られています。が、チューブのバルブの重さはメーカ毎・製品毎に差がありますので、実際には微妙にバランスが崩れます。速度計用マグネットもバランスを崩します。あと、WOタイプのタイヤはつけ方によっても重心は簡単に崩れてしまいます(gyochanさんご自身が書かれていますが、WOタイヤならビードの掛かり具合が周方向でムラになりやすいです)。なので、細かいことを言えばタイヤ/チューブの付け替えの度にバランシングはやり直しです(クルマでもタイヤ付け替えの度にやり直しですよね)。…うーん、とっても面倒臭いですね(笑)。
一定以上の品質のホイールに丁寧にタイヤとチューブを取り付けていれば、ホビーライダーにとってはコダワらなくても良いんじゃない? みたいな領域の話です。が、コダワり始めると、結構奥が深い世界。ようこそ、マニアの世界へ(笑)。
以下余談:
WOタイヤの交換時、ビードの掛かり具合にはどうしてもムラが出来ます(タイヤを外した時、リム脇にたまった汚れが線を描き、内側のビード付近に綺麗な場所が残ります;この綺麗な部分の幅が一定であればタイヤを付けるのが上手だということ)。で、このムラを減らすために、タイヤ装着時に台所用洗剤などを薄めてビード付近に塗ってビードとリムとの滑りを良くしてエアを入れた時にホイールとタイヤが同心円に近くなるようにするとか(作業後にはみ出た洗剤は洗い流します)、タイヤ付替時に時々タイヤを全周にわたって揉みながら少しずつ空気圧を上げて行くというのは結構有効です。
以上、重箱の隅っこのみたいなウンチクでした。
https://youtu.be/unNCzIBCp5Y
いつもありがとうございます!
いつもながらYuu-Changの知識の泉ぶりも素晴らしいですね(笑)。
たしかに、バルブの長さや種類、サイコンのセンサーマグネットでもバランスが違ってくることはここのご主人もおっしゃっていました。
タイヤ装着時のセンター出しについては、私も自分なりに注意するようにしています。揉みながら少しずつ空気を入れていく方法には自分で考えてたどり着いていましたが、間違っていなくてよかったです(笑)。これだとチューブの噛み込み破裂予防にもなってよいですよね。
しかし洗剤でビードフックを潤滑しておくというのは目ウロコでした!