2013年11月09日

技術について、私の持論。

今日はちょっとカタイ話。

SAJの教程が今シから刷新、というか、10年くらい前の状態にまで切り戻されることになったことは以前にもこのブログで話題にしたと思います。

正直なところ昨シーズンまでのハイブリッドスキーイング内足主導といった技術体系が私には性に合わず、その気持ちもたびたびこのブログで記事にしています。

ただ、教程の内容について論評を加える時には、「間違っている」とは表現せず、一貫して「好みじゃない」「性に合わない」「楽しくない」といった表現をするようにしてきました。だって、それがあってるか間違ってるかなんてジャッジできる技術も知識も経験も私にはありませんもの。

ですが、口にこそ出しませんでしたが、私なりの理由から旧教程の妥当性については疑いを抱いていたことも事実です。違うよねえ、と。

「私なりの理由」というのは、「結局、競技が一番エライ」という考えです。私の私見、っていうか持論ですね。個人的な。

私の別の趣味であるモータースポーツ自転車を通してそう考えるに至りました。モータースポーツも自転車競技もタイムを競う競技ですから、当然のことながら「人より先にゴールするために必要なことしかしない。」という徹底した合理性の哲学に貫かれています。

レースの世界において何が必要で何が不要かは、試せばすぐに勝敗やタイムが教えてくれます。勝てないけど正しいこととか、タイムは出ないけど正しいことなんて存在しません。長い長い時間をかけてたくさんの選手たちによるたくさんの切磋琢磨と試行錯誤の果てに、無効な技術は淘汰され、真にタイムアップに有効な要素だけがセオリーとして蒸留されていきます。

こうして最低限にまで無駄を削ぎ落とされ合理化されたセオリーこそ、そのスポーツの「基礎」をなすものだと私は考えています。

実際、一度クルマでスポーツ走行を経験すれば街乗りの運転ぶりも飛躍的に安全で安定したものになりますし、ロードバイク(競技用自転車)も同じ。いちばん速い自転車は、裏を返せばゆっくり走るならいちばんラクと言うことができます。どちらも、限られたエネルギーをいちばん効率よく距離に変換できた人が勝ちという競技なのですから当然ですね。

そのスポーツの真髄(エッセンス)は、すべて競技のノウハウの中にある。私の持論ではありますが、実際の経験を通してそう信ずるに至ったことでもあり、そう大きく間違った意見ではないんじゃないかと思っています。

ようやくスキーに話を戻せます。

スキーも同じです。アルペン競技はポールで制限されたコースをいかに速く失敗せずに滑り終えるかという競技ですから、徹底して合理的で効率的、かつ確実なものでなければいけないはずです。そこに無駄やリスクがあってはいけません。無駄やリスクがないということは、裏を返せばのんびり滑る時はもっともラクで安全と言えるはずです。

ところが、私がSAJのスクールに入って教わった滑りはどうも様子が違いました。アルペン競技と相通ずるところがない。アルペン競技で鉄則とされているはずの外足荷重外向傾姿勢といったさまざまなセオリーがことごとく無視されていたのです。

その滑りは、救いがたいヘタクソの私から見てもなんだか不安定でバランスが危うく、板まかせで雪面まかせといった印象でした。自分で板の性能を引き出しそれを御している感覚にとぼしく、偶然性に頼った滑りに思えました。

「このまま習ってても、ポールをくぐれるスキーヤーにはなれない気がする

そう思ったあたりから、だんだんSAJについていく気が失せていったのです。

それはお前がハイブリッド・スキーイングの真髄にまだ遠く及んでいなかったからだと言われればもちろんそれまでなのですが、ハイブリッド・スキーイングが公式に棄却された今となってはどっちでもよいことです。どっちでもよくなったからこそ今こうして記事にしているんですが。

結局、「コレジャナイ」という結論に達した私は低いモチベーションのままどうにか2級に合格し、その後そそくさとSIAに鞍替えすることになるわけですが、その時はSAJが完全にひっくり返るとなんて思ってませんでしたもんね。当分はSIAのお世話になろうと思います。

SIAのイントラは、「ポールを使ったレッスンも、言ってもらえばやりますよー」と言ってくれました。よ〜し、おじさん今年はくぐるぞ〜。

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posted by Gyochan at 01:56 | Comment(5) | TrackBack(0) | スキー
この記事へのコメント
こんにちは。

時々、記事を読ませて頂いておりました。
アルペンスキー研究所・黒所長と申します。
今回の記事に共感し、コメントさせて頂きました。

大抵のスポーツは、何か一つの方向に向かって歴史的に進化していっていると考えています。特に道具を使うスポーツは、道具の進化に補強されますので尚更です。
そして個人技術の上達は、そのスポーツの歴史的進化の過程を追うことが多いようです。

恐らく
スキーは『速く滑る』方向に進化しているのは間違いなく、今後もそれは変わらないと思います。競技が「エライ」のかどうかは別として(笑)
速く滑るために必要な要素を追えば、それが技術を進歩させる方向性と同じであると、私も考えています。

今後とも、頑張りましょう。またお邪魔します。ありがとうございました。
Posted by 黒所長 at 2013年11月09日 13:28
Re:こんにちは。

>黒所長さん
じぇじぇじぇ!!!
まさか黒所長さん本人からコメントをいただける日が来るとは! 「アルペンスキー研究所」、こちらはいつもディスプレイに穴が空くほど読ませていただいております、読者です! コメントありがとうございます!

「速く滑るために必要な要素を追えば、それが技術を進歩させる方向性と同じである」

太鼓判をいただいてとてもうれしいですが、実は、私の持論そのものが「アルペンスキー研究所」の諸文献から色濃く影響を受けておりますものですから、ある意味、共感いただけるのは必然なのです(笑)。

ギリギリ2級のレジャースキーヤーがたまに分不相応なことをつぶやくブログですが、出来の悪い弟子と思って今後ともよろしくお願い致します。
Posted by gyochan at 2013年11月09日 22:32
いえいえ、こちらこそ。

黒所長です。
参考にして頂けているとは・・・ありがとうございます。
巷のスキーヤーが、どのような事を感じていらっしゃるのか知るために、あちこちblogを覗いています。研究所の記事のネタ探しです。
また何かありましたら、本ブログの記事、また研究所にコメント入れて頂けると嬉しいです。今後とも、どうぞ宜しく。
Posted by 黒所長 at 2013年11月10日 11:28
こんばんは

今頃記事読みました。
SAJ教育本部の問題は、異論を唱えると干される事に有ると思います。
あの上手い宮下元デモが批判した途端に技術選で落ちましたよね…
正直、異論を唱える人を排除する団体には嫌悪感しかありません。
今回の転換に対しても今まで受講してきた人達への謝罪もない。
何が世界標準だ。
今までの教えがダメだった事を押し殺して、無理やり正当化しようとする姑息さ。
日本人はもっと適切に判断出来るように成長して行く事を求められているのかもしれませんね。
駄文、ご容赦を
Posted by tak at 2013年11月27日 22:29
Re:こんばんは

>takさん
コメントありがとうございます!

takさんのおっしゃる通りだと思います。
上場企業のようにイヤでも自浄を促す仕組みのない組織や権力は、これはもう、必ずと言っていいほど腐敗しますね。

相撲や柔道でもいろいろありましたが、宿命というか、そういう性質のものなのだと思います。スポーツ競技団体にかぎらず、世の中の○○協会みたいな団体やら独法はたいてい内部は老人たちのくだらないくだらないしがらみやメンツや年功序列や既得権益でガビガビになっていると思います。

そんな中でようやくSAJが「自力」で「まとも」と思える方向に舵を切ったことを私は素直に評価したいです。相撲や柔道のようにとことん醜態を晒して競技イメージを失墜させるような事態にまで至らなかったことをむしろ喜びたいほどです。

またご意見お聞かせくださいね。
Posted by gyochan at 2013年11月28日 01:48
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