
レジャー客でにぎわう「道の駅どうし」。意外にローディーは少ない

裏手を流れる道志川。道志みちはこの川に沿って走ります
死ぬる思いで「道の駅どうし」にまではどうにかたどり着きましたが、この時すでに我らが保守本流「山中湖まで行くぞ党」の政権支持率は30%を割り込み、代わって改革派「新党さあ引き返そう日本」が無視できない勢いで支持率を伸ばし始めていました。
すべてはこの休憩にかかっている。この休憩でどこまで体力を回復できるかで、この道志みちライドの成否が決まる。そう思いつめた表情で道の駅に入ってきた私を見て心配したのか、ひとりの紳士が私にニッコリ笑いかけてきました。
カーボンビアンキを駆り、ウエアもビアンキでキメたナイスミドルのローディーさんです。このビアンキさんは山中湖から三国峠を御殿場方面に抜ける予定だとか。三国峠は富士スピードウェイの帰りに御殿場側からクルマで登ったことがありますが、「ここ自転車で登るやつも絶対いるんだろーなー、絶対キチガイだよなー」と思った記憶があります。ここにいました。けどキチガイなんかではなく品が良く礼儀正しい方でしたけれども。
その方も、「私も最初に山伏峠を登ったときは、足着いて歩きましたよ」とおっしゃってました。ああ、こんな猛者のヒトでも最初は……。と少し勇気をもらえました。
涼しい屋内でソフトクリームをいただき、脚をマッサージしたりストレッチしたりして、30分ほどかけてゆっくりと休養をとりました。よし。ともかく行けるところまで行ってみよう。距離は8.5km、標高差はあと400mあるけど、400mっていったら松が谷周回たった4周分だ。疲れたら休む。てっぺんに着くまで何度でも休みゃええ。もうすでに何べんも道端で休んでいるんだからあと何回休んだって同じ。と、どこか開き直りに近い心境で再スタートしました。
再スタート早々に、腿がつり始めました。
こむら返りはどうにか沈静化しましたが、今度は腿、ひざのすぐ上あたりが両脚とも今にもつる姿勢を見せています。こりゃ何返りだ。なんとか「今にもつりそう」で押さえ込んでいますが、ちゃんとつったら無茶苦茶痛そうな部位です。うあー。どうあっても俺を山伏峠まで行かせないつもりか。いや休むよ俺は。休みますとも。
道の駅から計3回、停車して休憩しました。たった8.5kmの行程に3回です。青野原のコンビニで声をかけてくれた人たちのグループにもこの休憩中に追い抜かれました。泣き笑いの表情で見送る私に口々に「がんばって!」と激励の声を投げてくれます。私が這うようにしか進めないでいる坂をスイスイと登ってゆく……。すげえなあ。
坂はどんどん勾配を増していくのに、見通しは逆によくなっていきます。体力ばかりか精神力までも消耗させる、狡知にたけた作戦の坂なのです。すごい角度でまっすぐ伸びていく坂。写真をお見せできないのが残念ですがこの時の私に写真を撮る余裕などなかったことはここまで読んでくれた人ならばお察しいただけるでしょう。
そしてあるカーブにさしかかったとき、道の脇に注意看板が立っていました。
「トンネル内凍結注意」
とトンネル!? トンネルって山伏トンネルのこと? 山伏トンネルがすぐそこ! もしかしてこのカーブの先? これ曲がると山伏? 曲がると山伏? 曲がるよ? 山伏? 曲がるよ? 曲がったよ? トンネル! トンネルあった! トンネルあった! トンネルあったよ! 前畑がんばれ! トンネルあった! トンネルあった! トンネルあった!
「やまぶしーーーーッ!!」
すぐ目の前にある山伏峠(と同義である山伏トンネルの入り口)へと、この時とばかりに力強くペダルを進めながら、私は右の拳を高々と差し上げて叫んでいました。平成24年8月25日正午、道志みち最高標高地点「山伏峠」到達です。自宅からの標高差1045m。

山伏トンネル。ここにたどり着けた達成感は言葉にできません
残暑の道志みちライド その1〜道の駅まで
残暑の道志みちライド その2〜山伏峠
残暑の道志みちライド その3〜山中湖、復路