心のホームゲレンデ、湯の丸スキー場で SAJ 2級を受検してきました。
去年の1月 ASAMA 2000 での下見受検に続き、二度目の受検です。
結果は、大66 小64 フ66 計196 で、無事、合格。おつかれさまでした!
本当はもう少し練習を積んでから3月にASAMAで受検するつもりだったんだけど、ここに来て3月の予定がちょっと不透明になってきて、土壇場で受けられないなんてことになるのもいやだなあと。それに、「とっととこの件を片付けてしまいたい」という気持ちが自分の中で日に日に強まっているのを感じていました。
ままよ、受けられるうちに受けちまえってんで調べたら、おっ、日曜に湯の丸で級別テストがあるぞと。
湯の丸は何しろ心のホームゲレンデ。検定バーン(第1ゲレンデ)も何度となく滑ったことがあります。それに、私をスキーの道にいざなってくれた毒師匠(←高校時代のクラスメート)から以前「湯の丸で受けてみてはいかが?」とすすめられたことがあるし。すすめるからにはおすすめなのだろう。毒師匠も1級には湯の丸で合格しているので、ゲンのいい会場かもしれない。
──着いてみると湯の丸は本日パウダー・デイでございました。
も、モコモコで検定かい。……おう、ナチュラル上等!
昨シーズンの私だったらこの時点で戦意喪失してただろうなあ。整地しかスキーじゃないと思ってましたから。しかし今シの私は、コブにさえなっていなければ多少の不整地はほぼ問題ありません。一番乗りで受付を済ませたあとは検定開始まで「荒れきってしまう前に!」と粗踏みパウダーで遊んでおりました。
なかなか検定が始まりませんが。
受検者は私を含め4名。中には長板(非カービング)の方もおられました。
検定員は丸山さんという50絡みの男性。
検定バーンは第1ゲレンデ。検定時刻にもなるとゲレンデコンディションはパウダー粗踏みから単なる荒れ場に変わっていました。
種目は大回り、小回り、総合滑走の順で行われました。
ご存じのとおり、いやご存じでないかもしれませんが SAJ 2級は講習内検定です。普通のスキースクールのように講習を受けながらその過程で採点されます。「次の1本を採点します」とかは言われません。演技の説明を受け、検定員の模範演技を見、自分の試技を見せ、欠点の指摘を受け、次で指摘を受けた点を修正する。これを種目ごとに繰り返します。時には基本的な運動要素の確認のためにプルークスタンスで滑ったりもします。
なんとなく成り行きで私が毎回最終滑走者という感じになってしまい、最終滑走者はつくづく損だなあと思いました。
というのも、滑走後に検定員から受ける指摘やアドバイス。最初の人は全員のアドバイスを聞けて、最後の人は自分に対するアドバイスしか聞けないんですよね。それに、最後だとほかの受検者全員の滑りも見ることになるので、最初に検定員が行った模範演技のイメージが飛んでしまう。
ほかの受検者の滑りは極力見ないようにしよう、というのは前回の反省点でもあったのですが、まったく生かされませんでした。つい見ちゃいますね。
そういえば、今回は一貫して緊張しませんでした。前回は受かるつもりなんてサラサラない下見受検だったんで緊張なんかしなくて当然だったんですが、今回は一応合格を期して受検しておりますので、ガチガチにアガるかなと思ってたんです。自分どっちかいうとアガリ症ですし。
でも検定バーンを事前に滑ってみて、「やらけーし何とかなるな。」と、なんだかイケそうな気がしてきました。この自信に根拠はまったくないのですが、結果的にリラックスできたし検定中にもいろんなことを考えるゆとりができた。前日までは謙虚に、本番では自信たっぷりに。これはいい秘訣かもしれない。
ああなかなか検定が始まりませんね。
さてまず大回りでは1本目に「交互操作になっている」と指摘を受けました。交互操作?
この検定員はアドバイスに専門用語を説明なくどんどん使うのでどうかと思いました。「ニュートラルをしっかり作って」とか「もっと面で圧をかける意識」とか「山エッジをはずしてから」とか。もちろん言いたいことはわかりますけど、これ2級ですよ。内足・外足にしたって、ちゃんと定義を説明してから使ったほうがよいのではないかしら。
交互操作も、言いたいことはわかりましたがイラッとしたので「交互操作ってなんスか?」と聞き返してしまいました。切り替え時の踏み替え動作のことだそうですよ。「切り替え」も「踏み替え」も専門用語ですけど(笑)。ちなみに過去にはそのように操作すべしとSAJが教えていた時代もあったそうです。
大回りはその後は滑るたびに「いいですよ!」。ほかに言葉があっても感想的な一言ふたこと。ポジションに関する指摘はなかったので、よい位置に乗れているらしい。ん、これは合格点出てるな。とりあえず65点もらったことにしておこう。
それに対して小回りは指摘が絶えませんでした。ニュートラルが作れていない、リズムが悪い。そして指摘点を意識すればするほど滑りが乱れてきて、どんどん小回りが小回りじゃなくなっていくドツボに。自分らしく滑れていないときは足元を見てしまっていることが多かったので、一度下で見ている検定員から視線をはずさずに降りてみました。その時は「よくなりました! 今の感じでもう少し○△×……」とのコメント。ん、合格点は出ていないが惜しいところまで行っているな。64点か。
最後にフリー滑走。これはもう行ってやれで好きに滑りました。
1本目は運悪く強い向かい風が吹いてスピードが殺されてしまいました。検定員が「いいですよ! もう少しスピードが出せるといいですね」だから向かい風……。これも合格点は出ているっぽい。ならばもうちょいスピードを出せれば加点が出るということか? しかし2本目はタイミングが悪く、ほかの一般滑走者にラインを奪われて思った通りの滑走ができなかった。それでも検定員「今のはよかったです!」ほっ。仮に66点としておこう。
検定員のリアクションから憶測した自己採点では大65、小64、フ66。う〜ん、ギリか。小回りが63点だったら玉砕だな。
昼飯に『ロッジ花紋』で化学調味料だくチャーハンを食い、クルマに戻って講評・合格発表のある1時まで昼寝。そわそわ感は特になし。受かってたら合格だし受かってなかったら不合格だものね〜、と当たり前のことを思ってました。「でもまあ、どっちでもいいや別に。落ちてたら3月にまた受けよう……」くらいの気分だったのです。もっとああすりゃよかった、ああしとくんだった的な後悔はほとんどないので、どっちの結果が出ても素直に受け入れられる気分でした。
時間になり、スクール前で検定員の講評。
「板の真ん中に乗るというポジションがきちんとできていた人にはいい点数が出ています」
ふむふむ。俺はポジションのことは言われてないぞ。
「さらにその中でスピードを安定して出せていた人については加点をしています」
ふむふむ。スピードもいいと言われたぞ。
「それでは結果を張り出します」
ええと、ゼッケン番号21番……「合」。
合格ですか。よしよし。
大66、小64、フ66。あ〜やっぱ小回りは64か。大回りとフリーで加点が出てるな。へえ……。
認定料を支払ってバッジと合格証を受け取り、記念撮影。そして合格した仲間たちと笑顔で力強く「おつかれさまでした!」のあいさつ。
いっしょに受検した4人中3人が合格でした。非カービングの長板の方も合格でした。もうひとりの合格者は検定中見ていて「この人は抜群にうまい」と思った人なのですが10点も加点を得ての合格。合格証を受け取りながら「これで1級が受けられるんですよね?」とさっそく確認していたところを見ると彼にとって2級は消化試合だったもよう。それでもみなさん一様に晴れ晴れとした表情でした。
私はというと、もう少しこう、「やったぁ!」とか「ヨッシャ!」的なテンションになるかなと思っていたのだけれど、なんだか坦々とした気持ちでした。合格しちゃうとあっけないな、と。むしろ静かな解放感というか、肩の荷が降りたというか、そんな気分でした。
もうあの検定滑りをしなくていいんだ……。
気がつくと第1リフトに飛び乗っていました。頂上にはこれから1級検定会に臨む受験生たちが滑走の順番待ちをしていたので、その背中に「1級がんばってください!!」と大声で声をかけてから1ゲレに飛び出しました。
もうスピードは殺さなくていい。自分の思ったように好きなように滑ればいい。一歩間違えれば大転倒のスリルを味わってもいいのだ。1ゲレ中間のクニックまでは直滑降。ジャンプせんばかりに最後の急斜面に飛び出し、がっちり外足に荷重を乗せ、力いっぱい「くの字」のアンギュレーションを作ってカービング。これだよこれ!
魂の全開滑走を2本滑って、ようやく心から笑えました。よし、帰ろ帰ろ。